冠婚葬祭時の祝儀袋や不祝儀袋(香典袋)につけられる紅白や黒白の飾りを水引と呼びます。和紙をこより状にして、のりを塗り固めた日本の伝統工芸品です。さまざまな種類のものが売られていますが、今回はその由来や種類と弔事に適した水引をご紹介します。
水引の起源は、飛鳥時代(7世紀ごろ)に遣隋使である小野妹子が持ち帰った贈り物に、航海の無事を祈った紅白の麻紐が結ばれていたことが始まりと言われています。それ以降、宮中への献上品には紅白の紐が結ばれるようになったとされています。当時は「くれない」と呼ばれており、平安時代に入り「水引」と呼ばれるようになりました。
その後、時代とともに庶民へ浸透していき、現在に至ると考えられています。
水引という名前の由来は、和紙をこより状にして、水のりをひいて固めて作ることから、「水引」という名がついたと言われています。
水引には3つの意味があると言われています。
・未開封であることの証明
・魔除け
・縁結び
現在では、紐を結ぶ=人と人を結ぶという、縁結びの意味合いで使われることが多いようです。
水引にはさまざまな種類があり、使用する用途が異なります。お渡しする相手に失礼に当たらないよう、使い分けをする必要があります。
【色】
弔事で使われるのは、黒白、黒銀です。関西や北陸地域では黄白を使うこともあります。お祝い事やお見舞いなど慶事では、赤白や金銀の水引が用いられます。
【結び方】
さまざまな種類の水引があり、どの結び方のものを使えばよいか迷われた経験のある方もいらっしゃるのではないでしょうか。結び方にはそれぞれ意味がありますので、使用する場面に応じて選びます。
<花結び(蝶結び)>
紐の片側を引くと簡単に解け、何度でも結び直せることから、何度くり返してもよいお祝いやお礼に使用します。出産祝い、入学祝い、長寿祝い、お中元などです。
一方で、「くり返すこと」が望ましくない、結婚のお祝い、病気のお見舞い、弔事には用いませんので注意してください。
<結び切り(真結び)>
ほどけないように固く結ぶことから、「同じことが繰り返されないように」という意味を込めて使用します。結婚式やお見舞い、弔事に使用します。
<あわじ結び(あわび結び)>
結んだ輪の部分があわびの貝の形に似ていることから、この呼び名がついたとされています。固く結ばれていて、結びきりと同様の意味を持ち、結婚式やお見舞い、弔事に使用します。
両側に引くとより固く結ばれることから、「末永く続くように」という想いも込めて使われます。加えて、見た目も華やかなことから、結婚式のお祝いによく使用されます。
<梅結び>
あわじ結びをより複雑にした結び方で、梅の花の形に見えることから梅結びと呼ばれます。松竹梅は縁起物の定番であり、梅は厳しい冬を乗り越え花を咲かせることから、「固い絆、長寿」などの意味を持ちます。さまざまなお祝い事に使用されます。
【本数】
使用する本数には決まりがあります。
<弔事>
偶数本を用います。4本の水引が一般的です。
・簡易的な場合・・・2本の水引
・より気持ちを込めたい場合・・・6本の水引
※最近では、慶事と同じ5本の水引を使用する場合もあります。
<慶事>
奇数本を用います。5本の水引が一般的で、贈る金額に応じて本数を使い分けます。
・粗品など・・・3本の水引
・より丁寧なお祝い・・・7本の水引
3,000円から5,000円のお祝いには5本の水引、5,000円以上は7本の水引と言われています。
10本の水引は偶数ですが、婚礼関係で用います。5本を1組として、両家が手を結び合う様子に見立てて、5本の2倍の10本が使用されます。
※9本は奇数ですが、「苦」を想像させる不吉な数字ですので使用しません。
【仏式以外の場合】
<キリスト教>
水引は使用しません。十字架やユリの花が印刷された不祝儀袋を使用します。
水引のない不祝儀袋を探すのが難しい場合は、白い無地の封筒を使用します。最近では水引がついていてもよいとされています。ただし、蓮の花が印刷されているものや、「御仏前」と書かれたものは、仏式用なので使用しないように注意しましょう。
<神道>
黒白または双銀の水引を使用します。蓮の花が印刷された不祝儀袋は仏式用ですので、使用しません。
ご祝儀袋・不祝儀袋には水引、という当たり前の慣習ですが、このように由来や意味を知ると興味深いものですね。水引に込められた意味を知った上で相手に贈ると、より一層想いを深めることに繋がるのではないでしょうか。使用する機会があれば、ぜひ水引に注目してみてください。
香典の書き方と持参する際のマナーについては、以下のコラムをご参考にしてください。
コラム 香典の書き方と持参する際のマナー>
(投稿日:2023年9月19日)