自宅で葬儀を営み、その後葬列を作っていた時代。
「野辺送り(のべおくり)※」の儀式の際、遺族や会葬者は、故人を送るための道具を持って、火葬(埋葬)地まで歩いていました。
昭和初期ごろから、葬列の風習が減少し、持っていた道具は「祭壇」に置かれるようになりました。現在よくみられる、ひな壇型、寺院や輿(こし)をイメージした「祭壇」のかたちが定着したのはこのころです。
「祭壇」には、かつて「野辺送り(のべおくり)」で使われていた道具をコンパクトにして置かれています。今回はその「祭壇」に飾られる主な道具について解説します。
※自宅での葬儀が終わった後、火葬(土葬)のために火葬(埋葬)地までお送りする。故人をあの世へ送り出す一連の儀式のこと
【三具足】みつぐそく
今も昔も仏式葬儀において一番基本で最低限必要なものに<ろうそく>・<樒または花>・<御香>の三つがあります。
これらを使用するための道具が<燭台・花立・香炉>総じて「三具足(みつぐそく)」といいます。
ご遺体(棺)の前に配置する小机の上に置かれます。「燭台」はろうそく(灯明)を立てるための道具、「花立・樒立」は花や樒を生けるための花瓶、「香炉」は線香や「抹香」を焚くための道具です。
【四ヶ花】しかばな(「紙華花」などの表記をする場合もあります)
細かい刻みを入れた白い紙を細長い棒に巻きつけて花に見立てた造花で、四本一組を一対(八本)にして用いる祭壇飾りです。
「四華」、「四華花」、「紙花」などと表記されることもありますが、いずれも「シカ、シカバナ」と呼ばれます。
この四ヶ花は、お釈迦様がご臨終された際に周りにあった「沙羅(さら)」の木が一瞬のうちに白く変わったという故事からこの四ヶ花を沙羅双樹に見立てています。
(平家物語にもこのことが出てまいります。『祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり 沙羅双樹の花の色 盛者必衰の理をあらわす...』
【六道】ろくどう
祭壇の上部左右に三本ずつの「灯明(とうみょう)」のことを呼びます。
この「六道」のいわれは、仏教でいう六道(六つの冥界=地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、天上)にちなんだものです。死者は生前の行いによって六道のいずれかの冥界に行くとされ、いずれにいっても六地蔵の助けを願う「地蔵信仰」が反映されたものといわれています。
ただし、仏教ではめざす先(お浄土、極楽世界、お釈迦様の仏世界など)は違えども六道輪廻の世界から解脱することを目的としており、葬具として六道を飾るのも超えるべき世界を表すためということになります。
【松明】たいまつ
かつて葬列は夜に行われており、闇路を照らす明かりとして葬列を先導したのが「松明」です。また柩に火をつけるためにも使われていました。
現代の葬儀では、僧侶(導師)が法語を唱えて故人を仏道に導く引導を授けたあと、かつての作法にならって火をつける所作で用いられます。
※浄土真宗では、引導がないため使用しません。
【高欄】こうらん
祭壇の隅に取り付ける横木のことで、その中を聖域として周りと区別します。
いかがでしたでしょうか。普段の生活になじみが少ないために見落としがちですが、葬儀の祭壇まわりにある道具は、お供えをのせるものであったり、ご寺院が実際に儀式に使われる大切なものなのです。
今回解説したもの以外にも、儀式によって必要な道具は数多くあり、葬儀社は宗教宗派の教義にかなった道具を用立て、正しくお飾りする必要があります。
一柳葬具總本店は社名にもあるように、もともと「葬具商 一柳商店」として創業しました。明治10年の創業以来、各宗教宗派の教義・作法にかなった祭壇・道具を取り揃えあらゆる葬儀にお応えしています。
(投稿:2022年3月24日 更新:2022年5月17日)