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「遺言書を作成しましょう」と終活などで見聞きすることがありますが、遺言書がなくても財産は相続されます。ではなぜ遺言書は必要なのでしょうか。多大な財産がある人に限ったことと思われていませんか。今回のコラムでは遺言書についてご紹介します。
遺言書は、法律の定めと異なる相続の配分を希望する場合や相続時の揉め事を減らすために作成するものです。
例えば、生前お世話になった人にお礼がしたい、希望する団体に財産を寄付したい、また相続財産に分けられない不動産がある場合などさまざまな状況が考えられます。
不動産はお金のように分割できないので、誰が何を相続するのかを明確にすることで、相続人の間での揉め事を減らすことができます。遺言書作成の一番の目的は、遺産分割協議での揉め事を回避するためと言えます。
遺言書がない場合は、民法の定めに従って相続人に配分されます。遺産分割協議は相続人が全員揃って、合意した場合に遺産分割できます。つまり、連絡の取れない人や疎遠になっている人が法定相続人にいる場合、遺産分割が進まない可能性があります。
相続の結果に納得できない親族がいる場合は争いごとが起こることがあります。また相続財産が自宅だけの場合や住んでいる身内がいる場合、分割することができずに困る場合があります。その他、故人の財産を把握できないケースや、相続の際に負債や借金があることが判明するということもあります。
「うちの家族に限って争いごとは起こらない」と思われるかもしれませんが、相続トラブルは、相続金額の多い家庭に限ったことではないのです。どのご家庭においても、円満な相続のためには遺言書が有効なのです。
遺言書には三つの種類があります。
1. 自筆証書遺言
遺言を作成する人が、全てご自身で自筆する遺言書です。
<メリット>
・ご自身で気軽に作成できて、書き直しが容易です。
・手数料などの費用がかかりません。
<デメリット>
・法律に則った形式で書かれていないと無効になります。
例:パソコンで作成している場合(財産目録は除く)
訂正印を押印していない場合
・紛失や改ざんの恐れがあります。
・相続人に見つけてもらえない場合があります。
自筆証書遺言はご自宅で保管することになりますが、2020年より自筆証書遺言書保管制度が開始されました。この制度を利用すると、法務局で遺言書を保管してもらうことができます。詳しくは以下の法務省のホームページをご確認ください。
自筆証書遺言書保管制度について 法務省 >
2. 公正証書遺言
公証役場で、公証人に遺言者から聞いた内容を文章にまとめてもらい、公正証書にする遺言書です。2人以上の証人立ち合いのもとに作成されます。
<メリット>
・公証人が作成するため、誤りがなく確実に有効な遺言書が作成できます。
・公証役場で保管されるため、紛失や改ざんの恐れがなく安心できます。
<デメリット>
・費用がかかります。
・作成のために公証役場へ出向かなければなりません。
・2人以上の証人が必要です。
・内容を修正する場合は、再度遺言書を作成する必要があります。
3. 秘密証書遺言
遺言書の内容を秘密にして保管できる遺言書です。封をした封筒の中に遺言書が入っていることを公証役場で手続きして証明する方法です。
<メリット>
・遺言の内容を秘密にしておくことができます。
・偽造、変造が防げます。
<デメリット>
・公証人は遺言書の中身の確認はしないので、内容が法的に無効になる場合があります。
・遺言書自体はご自身で管理しなければならず、紛失の可能性があります。
・家庭裁判所の検認を受ける必要があります。
・2人以上の証人の立ち合いが必要です。
・費用がかかります。
遺言に記す内容は、自由に書くことができます。ただし、書き方によっては書いた内容が全て実行されるわけではなく、法的拘束力がない場合もあります。
また書き方によっては、かえって相続人同士のトラブルの原因になってしまうおそれがありますので、細心の注意を払う必要があります。
遺言書を作成する際は、以下のことに注意しましょう。
1. 遺言の内容は自分自身でしっかりと考えましょう
2. 判断能力が衰える前の元気なうちに書きましょう
認知症などによって判断能力が衰えた後に書かれた遺言は、無効とされる場合があります。
3.分かりやすく丁寧に書きましょう
どの財産を誰に残すのかをはっきりと分かりやすく書きましょう。
何をどうしたいのか事前にまとめ、箇条書きにしてから書き始めるとよいでしょう。
4.公序良俗に反する事は書きません
社会通念上、許されない事項や犯罪になるような事柄の内容の遺言は無効です。
5.遺言書の日付は正しく書きましょう
自筆証書遺言の日付は遺言者が作成時に遺言能力があったかどうかを判断するために重要なものです。実際に遺言書を作成した日付を書きましょう。
6.遺族を中傷するような内容は書きません
『長男は全く面倒をみてくれなかったので、全ての財産を次男に相続させる』などとすると、遺された2人の関係に溝ができてしまいます。波風の立ちにくい書き方をするようにしましょう。
7.言行不一致になる内容は書きません
例えば、普段から『相続するのは長男』と言いながら、遺言書に『全て次男に相続させる』と全く異なることを書いた場合は、遺言書が正式なものではないのではという疑いが浮上したり、遺族の不仲の原因になってしまいます。
遺言書に記載することで、法的拘束力を持つのは、「財産」「身分」「遺言執行者の指定」などで、これらを「遺言事項」と言います。遺言事項以外のことを書くことはできますが、法的効力はありません。
また「付言事項」とは、遺言に追加できる記載事項のことで、法律上の効力は有しません。しかし遺されるご家族への感謝の気持ちや、財産配分を決めた理由などを伝えることができます。単に財産の相続について記すだけでなく、ご自身の想いを遺すことで遺された人たちが納得して相続できる遺言書が作成できるとよいですね。
遺言書で葬儀や埋葬の方法を指定したとしても、法的な効力はありません。あくまで希望を伝えるという形です。必ず実行してほしい場合には、死後事務委任契約を結んで指定するなどの方法が必要です。
一番大切なことは、生きているうちにご家族やご親族と相続について話をしておくことです。死について話すのは、ハードルが高いことですよね。しかしいつかは来るもしもの時のことこそ腹を割って話をする必要があります。話し合いのきっかけづくりとしてポイントがあります。
・ライフイベントや行事・・・法要などでは、生きること死ぬことについて自然と考える機会になります。
・セミナーなどのイベント・・・終活セミナー、葬儀社の事前相談などに参加する方法です。家族や信頼できる第三者を交えて話してみましょう。
遺言書は、故人の思いを伝えるものです。相続財産の配分とともに、なぜそうしたのかご自身の思いをそえることで、遺されたご家族の繋がりを深める機会になるかもしれません。生前にご自身の葬儀などについて整えておくことも遺言の一つです。
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(投稿日:2024年4月3日)